相続登記の義務化については,令和6年4月1日以降の情報です。

法定相続登記について

法定相続登記とは

法定相続登記とは,不動産の所有権登記名義人が死亡した場合に,法定相続分に従って相続人全員について行う所有権移転登記手続のことをいいます。
例えば,夫が死亡して妻と子が法定相続人である場合に,「妻2分の1,子2分の1」という形で申請する所有権移転登記のことを,便宜「法定相続登記」と呼んでいます。

法定相続登記の特徴

法定相続人の一部についてのみの法定相続登記は認められておらず,必ず法定相続人全員分を揃って申請する必要があります。そのため,法定相続人の1人からでも全員分の法定相続登記を申請することができるとされています。

メリット

相続人全員による遺産分割協議を行わなくても登記手続を行うことができるため,相続人同士で話合いの場をもたなくても,相続人の一人から,相続登記申請義務を果たすことができます。
また,法定相続人全員分の法定相続登記がなされた場合,その全員について相続登記申請義務が果たされたと判断されることになります。

デメリット

不動産の所有権登記名義人の全ての相続関係を調査する必要があるため,相続が繰返し発生している場合(数次相続の場合)には,相続人調査や登記手続が複雑化する傾向にあります。
また,登記申請に関与しなかった相続人には登記識別情報(いわゆる権利証)が発行されない点も注意が必要です。

相続登記の義務化との関係

義務の内容

相続登記の申請の義務化との関係では,まず第一に法定相続登記を完了させるところまでを義務と定めています(新不動産登記法76条の2)。
所有権登記名義人の死亡後になにも登記手続等の対応がなされていない場合,まずは法定相続登記を行うのかどうかを検討することになります。

法定相続登記を申請した場合

所有権登記名義人が死亡後,法定相続登記を申請した場合,これにより相続登記の申請義務は果たされたことになります。
ただし,その後に次のような事情が発生した場合は,新たに3年以内の登記の申請義務が課されますので注意が必要です。
・相続人の一部につき相続放棄の申述が受理された
・遺産分割協議が成立した
・相続人に不動産を承継させる内容の遺言が発見された

遺産分割協議が先に成立した場合

所有権登記名義人が死亡後,法定相続登記等をする前に遺産分割協議が成立した場合,法定相続登記を省略して直接遺産分割協議の結果に従った所有権移転登記を申請すれば,相続登記申請義務は果たしたことになりますので,別途法定相続登記は行う必要がありません。

遺言がある場合

所有権登記名義人が死亡後,登記手続等をする前に遺言が発見された場合,遺言に従った所有権移転登記を申請すれば,相続登記申請義務は果たしたことになりますので,別途法定相続登記を行う必要はありません。

相続人申告登記(相続人である旨の申出)による代替措置

所有権登記名義人が死亡後,登記手続等をする前であれば,相続人申告登記(相続人である旨の申出)を行うことで,相続登記の申請義務を果たしたことになります。
この場合は,法定相続登記を申請する必要はありません(ただし任意に申請することは可能)。
ただし,相続人申告登記(相続人である旨の申出)後に遺産分割協議が成立した場合は,遺産分割協議成立の日から3年以内に新たな登記義務を負いますので注意が必要です。